すごくしょうもない理由で漫画を描くことをやめたことを思い出しました。
私はもとから漫画やアニメが大好きで、ノートにオリジナルの変な漫画をいつも描いていた。
中学生の頃にファンロードという雑誌に出会い、同人誌の存在を知った。
田舎の中学校で生徒数は少なく、同じような趣味を持つ人もいなかったのでひとりで同人誌即売会に行ってみたりした。
高校生になると同人誌を既に作っているクラスメイトがいて、すぐに仲良くなって一緒に同人誌を作ったり、サークル参加をしたり楽しむようになった。そのうち格ゲーにはまると近くのゲーセンに毎日通い出し、そこで友人ができて、その中には同人誌を描いている女子も数名いた。この女子はいまだに親友。
そんななか、私は19才の頃ほのかに片思いをしていた同じゲーセン友達のちょっと年上の男性に「もうそろそろ同人誌とかマンガ描くとか恥ずかしいよ」と言われて、同じオタクだと思っていた人からそう思われていたことにショックを受けた。結局その人には振られてしまったのでしばらく同人誌を作ったり、絵を描いてHPにアップしたりと趣味程度にひっそりと楽しんでいた。
24才の時に今の旦那さんと出会い見た感じ普通の人のように見えたため「マンガ描くとか恥ずかしいよ」というあの一言が頭をよぎり、「マンガ描いてるってばれたら振られる…」と失恋を恐れた私は同人誌は友人に譲り、画材は泣く泣く処分した。
ICのトーンを捨てる時は胸が痛んだ。
私が漫画を諦めた理由をふと思い出してみたら、こんな「好きな人に振られたらいやだ」というとんでもなくしょうもない理由だった。そしてこんなしょうもない理由をすっかり忘れてしまっていた。なんとなく「才能がないから」とか「働きはじめて時間がなくなったから」だと思っていたけれど、根本的な原因は「オタクとバレたら振られる」という恐れだった。
乙女か。
漫画をまた描き始めたのは去年くらいにComicStudioというフルデジタルで描ける環境が浸透していたことを知ったから。
その昔「原稿にもPhotoshopみたいにレイヤーがあればいいのに」と何度思ったことだろう。
原稿をレイヤーでわけて描けるなんて素晴らしすぎる。おまけにインクが手についたり、トーンをちびちび使う事もない。子供がウワーイってはしゃいで突撃してきて開明墨汁をひっくりかえす心配もないと思うと、そのソフトを買って描いてみるしかないと思った。
結婚して10年も経ち、出会った当初は「見た感じ普通の人」だと思っていた旦那さんは普通の人ではなく私よりもオタクだったことも解り、今は漫画を描くことも理解して協力してくれるようになりました。
今回のネーム大賞で読者投票一位をいただいたことも、何故か旦那さんの知人までもが喜んでくださって「すごいね」と褒めてくれたそうです。
「すごいね!
奥さん、どこに向かってるの?」
って。
それ褒めてないから。
ほんと自分でもどこに向かったらいいか解らないんですけど、とりあえず一生に一回くらいは夢の週刊少年ジャンプに投稿してみたいなぁと思います。