カタルシスプランから考える鉄血のオルフェンズの終結
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズを見ました。
最後が辛すぎて今もなお引きずっていますので感想を書いてみようと思います。
前置きとして、私はオタクでガンダムについてはある程度知ってはいますが基本的にハマったことはなく、ニワカです。
オルフェンズは鉄華団の全員が良いキャラすぎて見ているうちに夢中になったものの、好きすぎたゆえに結末にはむせび泣くしかありませんでした。
つらい。
以下ネタバレ注意です。
カタルシスプランとは
樹崎聖先生が書かれた、面白いと確信して描ける漫画演出についてまとめた本のタイトルです。
創作したストーリーを盛り上げ面白く魅せる要素は「カタルシス」だそうです。
語源はアリストテレスが『詩学』に書き残した悲劇論から、「悲劇が観客の心に恐れと憐れみを呼び起こし感情を浄化する効果」をさす演劇の用語で、「心にあるわだかまりが何かのきっかけでいっぺんに解消されること」。謎が解ける、努力が実る、ピンチから脱出する、人に認められる……「期待が満たされ、それ以上の満足ができる結果」が与えられることです
カタルシスプラン P145より
1期の最終回ではカタルシスは得られない
1期の「鉄華団はまだまだ走りつづけるぜ!」という少年漫画の最終回みたいな状態で終わってくれたらそれで平和だったのですが、個人的にはあれで終わりであればここまでハマることはなかったでしょう。
1期でフミタンとビスケットが死んでしまったものの、ガンダムにおいて仲間のキャラが死ぬことは当たり前なので辛いとは思ったもののまだ耐えることができました。想定内の展開だったのだと思います。
ギャラルホルン側では信じていた親友であるマクギリスに殺されてしまったガエリオを見て、気持ちが晴れるどころかもやっとしてしまいました。
1期ではまだまだカタルシスが得られたとは感じることはできなかったのだと思います。物語にはまだまだ続きがあるのだから当然ですね。
2期の最終回で得られたカタルシス
序盤から丁寧に描かれた鉄華団の絆のおかげでオルガが死んだ時は嗚咽を漏らしてしまうほど泣きました。
名瀬が死んだ時にタービンズの女性たちが号泣しましたが、あれくらいの勢いで泣いた。
私の中で恐れと憐みの感情が盛り上がっていきます。
ジュリエッタやイオク様の妨害のせいで鉄華団の作戦がうまく行きそうで行かないところにイライラし、鉄華団はどうなってしまうんだろう…という恐れや不安、心配が呼び起こされていきます。
ここで鉄華団が一致団結し三日月とバルバトスの潜在能力が開花し奇跡の強さを発揮し、なぜか突然完全に味方になったマクギリスとバエルとの協力によってギャラルホルンを殲滅し鉄華団のみんなとハッピーエンド☆ビスケット…俺たちやったよ…!みたいな安っぽいカタルシスプランに流れることはなく…主人公の三日月までもが死んでしまい、鉄華団を牽引してきた重要メンバーがどんどん死んでいく展開には絶望を感じ、ますます物語に引き込まれていきました。
結局はギャラルホルンがダインスレイヴという禁断の最強兵器を持ち出して鉄華団を殲滅。
子供が大人に逆らっても勝てないからな?ということをラスタル様が全力で見せつけ戦争は終結しました。
厄災戦の種となったモビルアーマーを倒すことで見せつけた三日月の強さってなんだったの…?と呆然とするしかないような終結。あの強さがあったからこそ最後にダインスレイヴを持ち出す正当な理由が作れたんでしょうけど…。
ストーリーの結末としては、努力が実り火星は独立し、ピンチから多くのメンバーが脱出し戦渦を逃れることができ、クーデリアは火星の首相となり人に認められて、しっかりとカタルシスは回収されていたと思います。
ただあまりに犠牲が多く、個人的にはショックのほうが強い終わり方だと感じました。
一体何だったのか
ガンダム・バエルとは一体何だったのか。
マクギリスが躍起になって手に入れて、天使の羽みたいなの出てすげー強そうじゃんバエルさんって思ったけど、なんかそんなに活躍しないで死んじゃった感じある。
しかも、バエルを手に入れればギャラルホルンはみんなボクいいなりだー!みたいに思っていたのに、誰ひとりマクギリスに跪くものはいなかった時、見ていてこっちが辛かった。はずかしーーーー!!!!!!ドヤ顔でバエルの存在アピールしてるのに、何の効果もねええーーーーーー!!!って思って…。
マクギリスは鉄華団を壊滅に追い込んだ一旦ではあるけれど、生い立ちやガエリオとの最後を見届けるに憎めないキャラだったと思います。
個人的に良かったカタルシスプラン
ストーリーの結末にはカタルシスを感じれませんでしたが、個人的にカタルシスを感じれた展開を。
クーデリアとアトラの家庭
アトラが三日月との子供、あかつきくんを産んでクーデリアと結婚し家族になっていました。あかつきには平和な時代で愛情をたっぷり受け取って健やかに育ってほしい。そんな気持ちになりました。よかった。
三日月は戦争の犠牲になってしまったけれど、鉄華団が自分たちの居場所を守ろうとした結果、あかつきくんを健やかに育てることのできる世界ができたんだなと思いました。
アトラが三日月と子供をつくろうとしたのち、三日月と抱き合っているクーデリアの姿を見たシーンでは、アトラが嫉妬でもするのかな?と思ったところ、まさかの「クーデリアさんも三日月の子供つくろうよ!」というセリフ。
これには天国で見守っていたビスケットさんもびっくりしたことでしょう。
色々な恋愛の形があるのはオルフェンズの見どころのひとつだと思います。
タービンズの女性が全員名瀬の奥さんだったことを考えると、おそらく夫も妻も100人いても大丈夫みたいな世界なのかもしれないですね。
イオク様最後ペシャン公
部下に対して実直だけれども、バカで戦闘もど素人で勢いだけで鉄華団を邪魔してきたイオク様。物語を観客の思い通りにさせないために存在している意外性担当。
ギャラルホルン内ではクジャン公と呼ばれていたイオク様は最後の死に様から巷ではペシャン公と呼ばれていますが、そこを見越してのクジャン公というネーミングだったのでは?と思うほどしっくりくるペシャン公という呼び方。
毎回「今度こそ死んだか」と思ったのにピンピンして再度登場するイオク様を見ては、こいつが生き残って鉄華団が全滅なんてシャレにならねえぞ…と思っていました。
最後に瀕死の昭弘をショボいモーションで殴ってドヤ顔には苛立ちしかありませんでしたが、無事昭弘の手によりぺしゃんこに潰され、カタルシスを回収。
ライドの復讐
最終回、みんながそれなりに平和で幸せそうに暮らしているのを見て「良かったね…」と思っていたところで、ライドがオルガの復讐を果たしノブリスを銃殺。
この時ライドはオルガのスカーフを巻いて三日月の銃を持っていた。
ライドの復讐には賛否両論かもしれないけれど、鉄華団の絆を考えるとオルガの復讐を誰ひとり行わないことも考えにくいので、ストーリーとして整合性がとれているとは思いましたし、ライドのおかげで私はカタルシスを回収することができました。
成長したライドがとても格好良かったです。
最後に
これはアニメなのはわかっているけれど、やはり戦争を描いておいて「全員生きてハッピーエンド☆」なんてものはご都合主義すぎてありえないと感じてしまうとは思う。
仕事で戦争をしていたら世界の変革に巻き込まれてしまった少年たちの結末はやっぱり悲しいものでしかなかったのはしょうがないことなんだろう。
最後のダインスレイヴには萎えたけれど、鉄華団とギャラルホルンの歴史や組織の大きさの違いを考えたら当然の結末であり、オルフェンズはこの終わらせ方しかなかったのかもしれない。
ストーリーとしてはしっかりとカタルシスを回収しつつ、ギリギリ納得のできるラインでメインキャラを失わせることで観客がよりストーリーにのめり込むようにできていたのかなと思います。
「期待が満たされ、それ以上の満足ができる結果」が得られたかと言えば、作品としては期待以上の満足があったからこそ私はオルフェンズにハマって、終わってからもキャラの死を引きずっているのだと思います。
本当はオルガにも三日月にもみんなに生きていて欲しかったけれど、その終わり方では「期待の範囲内」だったのかもしれません。
キャラが死んでもオタクは二次創作で自由に蘇らせることのできるネクロマンサーの能力を持っているので、この悲しみはしばらくpixivで癒していこうと思っています。
もし来世があるのなら、イオク様以外の死んでしまったみんなは生まれ変わったらまた出会って、今度は平和な世界で幸せに暮らしてほしいなと思いました。
とくにOPはみんないい曲だった
TVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」Original Sound Tracks
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